デートスポットとして名高い、お台場。
ネオン輝く夜の夜景を背景に、僕は彼女と二人っきりのひと時を過ごしていた。
(ああ・・・このままずっとこの幸せなひと時が続けば良いのに・・・)
刻々と近づく、今日という日の別れに、もどかしさを感じる。
・・・・「またね」
・・・・・・
・・・
! は、・・夢か・・・
目覚めの朝と共に、僕は、1年前のデートの出来事を夢の中で思い出した。
・・・そう、そのデート相手の彼女は、今、海外留学のため3年以上戻って来ない。
しばらく会ってなかったからだろう。留学前最後のデートのことを思い出したのは。
諸行無常のごとく、絶えず変化し続ける現実世界。
自分の夢に向かって突き進んでいく彼女。
彼女の存在がどんどん遠くなっていくように感じてた。
・・だが、1年前のあのデートの出来事を夢の中で思い出したことで、気付かされた。
「あの頃の気持ち」を忘れそうになってたことに。
夢の中で思い出した光景
それは、彼女と夜空を眺めてた時のことだった。
夜空が好きな彼女。プラネタリウムにデートに行った時の思い出。
そんな、夢の中の出来事を思い出してる時に、ふと横を向くと一冊の本が無造作に置かれてた。
自分がだいぶん前に買った本だ。
「・・・・・生ける宇宙・・・」
(…!!)
……
世界は絶えず変化し続け、常ならむなら、
気持ちも絶えず変化し続け、常ならむものだ。
・・そう、恋人の愛し合う気持ちも・・・
忘れそうになってたあの頃の愛し合ってた気持ち。それを思い出させてくれたのは、思い出という名の記憶だった。
記憶は変わらず、あの頃の出来事を再現してくれる。
記憶の中の彼女は、いつも変わらず僕に笑いかけてくれる。
「初心忘るべからず」という言葉が脳裏を過った。
果たして、『記憶』は自分の頭の中でしか存在しないのだろうか?
もしあの頃の出来事の思い出が、どこかこの世とは違う場所に記録されてたとしたら、
その記録は僕たちに、どう語りかけてくれるだろうか?
夜空の眺めとともに、僕と彼女の思い出が走馬燈のように蘇る。
・・・よし、電話しよう。