並行世界 ~『隠れていた宇宙 』(著:ブライアン・グリーン )~
※以前の自身のブログ記事を転載
・『隠れていた宇宙 下』(ブライアン・グリーン (著), 大田直子 (翻訳), 竹内薫 (監修))
読み終わりました。
いや~~、おもしろい本だった。
※ここからは、書籍の引用を中心としたまとめ。
【様々なバージョンの並行宇宙】
・パッチワークキルト多宇宙
無限の宇宙内の状態は必然的に空間のあちらこちらで繰り返され、並行宇宙を生み出す。
・インフレーション多宇宙
永遠の宇宙インフレーションが泡宇宙の巨大ネットワークを生み、私たちの宇宙はその1つである。
・ブレーン多宇宙
ひも/M理論のブレーンワールドシナリオでは、私たちの宇宙が存在する3次元ブレーンは、ほかのブレーン――ほかの並行宇宙――も存在する可能性のある、より高次元の場所に浮かんでいる。
・サイクリック多宇宙
ブレーンワールド間の衝突がビッグバンのような始まりとして現われ、時間的に並行するいくつもの宇宙を生み出す。
・ランドスケープ多宇宙
ひも理論の余剰次元の様々な形は、インフレーション宇宙論とひも理論を合体させることにより、様々な泡宇宙を生み出す。
・量子多宇宙(エヴェレットの多世界解釈)
量子力学によると、確率波に具体化される可能性はすべて、巨大な並行宇宙集団のいずれかで実現する。
・ホログラフィック多宇宙
ホログラフィック原理の前提によると、私たちの宇宙は遠くの境界面で起きている現象、すなわち物理的に並行宇宙に相当するものを、まさに映し出したものである。
・シミュレーション多宇宙
技術の飛躍的発展には、宇宙のシミュレーションがいつか可能になるかもしれないと示唆している。
・究極の多宇宙
豊饒性の原理が主張するところによると、ありうる宇宙はすべて実在の宇宙であり、したがって、なぜ1つの可能性――私たちのもの――が特別なのかという疑問は回避される。これらの宇宙はありうる方程式すべての具体例である。
細かいところは案によってかなり違うが、どれもが示唆しているのは、リアリティについて私たちが描く常識的なイメージは、大きな全体像の一部にすぎないことである。
(※私ふるふるが特に注目している案をピックアップ)
『ホログラフィック多宇宙』は、実証済みの理論―― 一般相対性理論と量子力学――の検討から現れたものであり、ひも理論による最強の理論的裏づけがある。(ひも理論とは、一般相対性理論と量子力学を統合しようとする試みである。)
ホログラフィーにもどづく計算はすでに、重イオン衝突型加速器の実験結果と暫定的に合致していて、あらゆる兆候が、そのような実験とのつながりは将来的にもっと確実になることを示している。
『ホログラフィック多宇宙』を単に役に立つ数学ツールと見るか、ホログラフィックなリアリティの証拠と見るかは意見の違いである。
物理学的解釈のもっと強固な論拠を築くためには、理論的にも実験的にも将来の研究を待たなくてはならない。
私たちの宇宙は唯一ありうる宇宙ではない。その性質は違っていたかもしれない。そして多くの多宇宙案において、ほかの構成宇宙の性質は実際に違うだろう。
ということは、あるものがなぜそのようになっているのか、根本的な説明を探すことは無意味だろう。
むしろ、とてつもなく広大な宇宙に対する私たちの理解には、統計的な可能性や単なる偶然が確実に差し挟まれるのだろう。
●SF化する現代物理学
21世紀に入り、現代物理学の最先端は未曾有の異変に見舞われている。これは(監修者)の十年来の持論なのだが、今や「物理学はSF化しつつある」のである。
そもそも現実と虚構の差はなんだろう? 少なくとも20世紀までは、その基準は、「検証できるかどうか」であった。科学者が、どんな仮説をたてるのも勝手だが、その仮説から引き出される予測数値が、実験装置や天体望遠鏡などで検証されなくては意味がない。検証されて初めて、それは一人前の「物理学」として認められる。いくら精緻な数学の方程式を並べても、検証されなければ、それは「数学」であって「物理学」ではない・・・・・・。
だが、今や、そんな基準は吹き飛んでしまった。その証拠に、全世界で何千人という「科学者」たちが、一度も検証されたことのない超ひも理論やインフレーション多宇宙や多宇宙の研究に勤しんでいる。彼らの一部は数学科に属しているが、その多くは物理学系の学科や研究所に属している。